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2026/10/16
企業向け副業人材の受け入れで人手不足を解消!メリットと注意点を解説
人手不足やスキル不足に悩む企業にとって、副業人材の活用は有力な選択肢です。正社員を採用せずに専門知識を取り込めるため、近年は大企業からスタートアップまで導入が広がっています。
一方で、労働時間の管理や情報漏洩など、受け入れ前に押さえるべき注意点も少なくありません。本記事では、これまでの「自社社員の副業を認める」視点から転じて、外部の副業人材を「受け入れる」側の実務を取り上げます。受け入れのメリットと注意点、社内体制の整え方や採用の流れまでを、人事労務の観点からわかりやすく解説します。
副業人材の受け入れとは
副業人材の受け入れとは、本業を別に持つ人材を、自社の業務に部分的に参画してもらう形で活用する取り組みです。フルタイムの正社員とは異なり、週数時間から数日といった限られた稼働で専門性を発揮してもらう点が特徴といえます。
副業人材が注目される背景
副業人材が広がる背景には、政府による副業推進と個人側の意識変化があります。働き手のキャリア観が多様化し、複数の場で力を発揮したい人が増えているためです。
民間調査では、副業を実施している人の割合は 10.7 %と報告されており、実施率は年々高まる傾向にあります。副業を認める企業の広がりとあいまって、外部から迎え入れられる副業人材の層は着実に厚みを増しているのです。
参考:ジョブズリサーチセンター「兼業・副業に関する動向調査 2024 」
受け入れ形態は 2 種類ある
副業人材の受け入れ方は、大きく「業務委託」と「雇用契約」の 2 つに分かれます。両者の違いは次の表のとおりです。
| 項目 | 業務委託(非雇用型) | 雇用契約(雇用型) |
|---|---|---|
| 労働基準法の適用 | 原則として対象外 | 適用される |
| 労働時間の通算 | 不要 | 必要 |
| 指揮命令 | できない | できる |
| 報酬の形 | 成果・業務に対する報酬 | 賃金 |
どちらを選ぶかは、事務負担の大小ではなく業務の実態で決まります。作業の進め方を細かく指示する必要がある業務は雇用契約、成果物や役割を切り出して任せられる業務は業務委託が適した形態です。表のとおり業務委託には労務管理上の負担が軽いという利点がありますが、実態として指揮命令をしていれば「偽装請負」と判断され、結局は労働基準法上の責任を問われます。まずは業務を切り出せるかどうかを検討し、切り出せる場合に業務委託を選ぶ、という順序で判断しましょう。
偽装請負に関する注意点は、こちらの記事も参考にしてみてください。
「偽装請負」のリスクを徹底回避!実践すべき 3 つのチェックポイント(業務委託契約と請負契約の解説記事)
副業人材を受け入れる 4 つのメリット
副業人材の受け入れには、コストや柔軟性の面で複数のメリットがあります。ここでは代表的な 4 つを順に見ていきましょう。
専門スキルを低コストで得られる
主なメリットは、必要なスキルを必要な分だけ確保できる点です。正社員として雇うと固定費がかかりますが、副業人材なら稼働分の報酬で済むためです。なお、業務委託契約であれば雇用関係ではないため、社会保険料の会社負担が発生しない点もコストメリットといえます。
たとえば広告運用の改善、 SNS アカウントの立ち上げ、採用広報の記事制作など、成果物や役割を切り出せる業務であれば、月 10 〜 20 時間程度の稼働でも十分に形になります。逆に、日々の判断や社内調整が求められる業務を限られた稼働時間で任せても、状況の把握だけで時間が過ぎ、成果につながりにくくなります。
副業人材が力を発揮できるかどうかは、稼働量の多さよりも「業務を切り出せるかどうか」で決まると考えておきましょう。社内に人材がいない分野でも、切り出しさえできれば即戦力の知見を限定的なコストで取り込めます。副業人材と正社員のコストは、こちらの記事で詳細を比較しています。あわせて参考にしてみてください。
人手不足をすぐ解消できる
副業人材は、採用のスピード感でも強みを発揮します。正社員採用は選考から入社まで数ヶ月かかる一方、副業人材は短期間で参画してもらえるケースが多いからです。繁忙期のプロジェクトや急な欠員の補填など、スピードが求められる場面で特に効果的です。
社外の新しい知見が入る
外部の視点が入ることで、社内に新しい発想が生まれます。他社や他業界の経験を持つ人材が、自社の慣習にとらわれない助言をもたらすからです。長く同じメンバーで運営してきた組織ほど、こうした刺激は貴重な財産になります。既存社員の学びにつながる点も見逃せません。
正社員採用より柔軟に動ける
契約形態を選べるため、事業状況に応じた柔軟な体制を組めます。プロジェクト単位での契約や稼働量の調整がしやすく、変化の速い事業環境に適応しやすいのです。将来的に転職を視野に入れている人材であれば、「まず副業から関わってもらい、相性を見て正社員化を打診する」という採用の入り口としても機能します。
ただし、本業を持つ副業人材は必ずしも転職を希望しているわけではありません。正社員化を前提に据えるのではなく、相手のキャリア意向を確認したうえで、あくまで副次的な可能性として捉えておくのが現実的です。
副業人材を受け入れる時の 4 つの注意点
メリットの多い副業人材ですが、労務管理上のリスクも伴います。特に業務委託で受け入れる場合、「自社の社員と同じように接してよい」と考えてしまい、意図せず法令違反の状態に陥っているケースが少なくありません。契約形態ごとに、次の 4 点を押さえておきましょう。
業務委託には指揮命令ができない
業務委託で受け入れた副業人材に対して、自社の社員と同じように業務を指示することはできません。業務委託は「特定の業務や成果物の完成」を依頼する契約であり、働き方そのものを管理する権限は発注者側にないためです。
契約書上は業務委託でも、実態として指揮命令をしていれば「偽装請負」と判断されます。その場合は労働基準法上の使用者としての責任を問われ、割増賃金の遡及支払いや労働時間の通算義務、社会保険の加入手続きなどが一度に発生しかねません。
判断に迷いやすいポイントを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 業務委託で依頼できること | 業務委託では依頼できないこと |
|---|---|---|
| 業務の内容 | 成果物の仕様・品質基準・納期を示す | 作業手順や進め方を逐一指示する |
| 時間 | 納期までの完成を求める | 始業・終業時刻や稼働日を指定する |
| 場所 | 業務上必要な範囲での出社を依頼する | 常時オフィスでの作業を義務づける |
| 範囲 | 契約で定めた業務を依頼する | 契約にない業務を追加で命じる |
| 参加 | 必要な打ち合わせへの参加を依頼する | 朝礼や全社定例への参加を義務づける |
特に注意したいのが、悪意なく起きる指示です。「今日は何時から稼働できますか」「手が空いていればこちらもお願いします」といった、社員相手なら自然なやりとりの積み重ねが、指揮命令の実態と評価される要因になります。受け入れ担当者にも、依頼してよい範囲をあらかじめ共有しておきましょう。
雇用契約なら労働時間の通算管理が必要になる
雇用契約で受け入れる場合、労働基準法第 38 条第 1 項に基づき、本業と副業の労働時間を合算して管理する義務があります。本業で 1 日 8 時間働く人を 2 時間雇えば合計 10 時間となり、自社が「後契約」の使用者として割増賃金を負担します(業務委託の場合、労働時間の通算は不要)。
情報漏洩と競業のリスクがある
副業人材は複数の企業に関わるため、情報管理のリスクが高まります。自社の機密が他社へ流出したり、競合に利する行為が起きたりする可能性があるからです。
対策としては、秘密保持契約( NDA )の締結が欠かせません。さらにアクセスできる情報の範囲を業務上必要な範囲に限定し、競業避止の条項を契約に盛り込むことも有効です。
社会保険と労災の取り扱いが複雑になる
副業先でも、加入要件を満たすと社会保険の手続きが必要です。週の所定労働時間が 20 時間以上で、特定適用事業所(被保険者数 51 人以上の企業)に勤務するなどの条件を満たすと、副業先でも社会保険に加入することになります。
この場合、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 二以上事業所勤務届」を提出します。従業員自身がどちらか一方の事業所を主たる事業所として選択し、保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額に基づいて按分されます。
労災保険についても、複数の事業場で雇用されている副業人材が被災した場合、給付額の算定ではすべての就業先の賃金額を合算します。このように、雇用型で受け入れる場合は社会保険・労災の面でも手続きが増えるため、事前に対応体制を確認しておきましょう。
ただし、事務負担の軽さだけを理由に業務委託を選ぶことはできません。契約形態は業務の実態(指揮命令の有無)に応じて決まるものであり、実態が伴わなければ結局は雇用と同じ責任を負うことになります。まず業務を切り出せるかを検討し、切り出せるなら業務委託、進め方の指示が不可欠なら雇用契約、という順序で判断しましょう。
副業人材を受け入れる前に整えるべき社内体制
副業人材をスムーズに迎え入れるには、事前の体制整備が欠かせません。規程・契約・マネジメントの 3 つの側面から準備を進めましょう。
業務委託規程や情報セキュリティルールを見直す
副業人材を受け入れる前に、業務委託規程と情報セキュリティルールが現状の運用に合っているかを点検しましょう。副業人材は雇用ではなく業務委託契約で受け入れるケースが多く、自社社員を前提とした就業規則だけでは対応しきれない場面が出てくるためです。
特に確認すべきは、機密情報や個人情報の取り扱いを定めた情報セキュリティルールです。社外の人材がどの範囲の情報にアクセスできるのか、貸与する端末やアカウントの管理をどうするのか、契約終了時にデータをどう返却・破棄するのかを明確にしておく必要があります。
あわせて、業務委託規程における契約違反時の対応や損害賠償、秘密保持に関する条項も、副業人材の実態に合っているか見直しておきましょう。また、個人を業務委託で受け入れる場合は「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」への対応も不可欠です。契約書の明示義務や支払期日の設定など、法に則った契約運用を行うことが、信頼関係の構築とリスク回避につながります。
なお、フリーランス法に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。合わせて参考にしてみてください。
【フリーランス法】施行開始 1 年で見えた実態と企業が対応すべき義務・勧告事例・罰則を解説
契約書で定める内容を決める
契約書は、副業人材との関係を明確にする土台です。口頭の合意だけで進めると、後々の認識のずれが大きな紛争に発展しかねません。最低限、次の項目は書面で定めておきましょう。
業務範囲と成果物を明記する
依頼する業務の範囲と、期待する成果物を具体的に記載します。範囲が曖昧だと「ここまでやってほしかった」という食い違いが生じやすいためです。稼働時間や報酬の算定方法、納期もあわせて明文化しておくと安心です。
秘密保持と知財の帰属を定める
機密情報の取り扱いと、成果物に関する知的財産権の帰属も必ず取り決めます。特に成果物の著作権は、定めがないと制作者側に残るのが原則だからです。「業務で作成した著作物の権利は自社に帰属する」と明記し、秘密保持義務とあわせて契約に組み込んでおきましょう。
マネジメント体制を構築する
受け入れた人材が力を発揮できるよう、社内の受け入れ担当を決めておきます。窓口が不明確だと、副業人材が誰に相談すべきか分からず、稼働が滞るからです。限られた時間で成果を出してもらうには、目標やタスクを明確に共有する仕組みが重要になります。
また、マネジメントの留意点として「稼働時間の調整」が挙げられます。副業人材は本業の合間に稼働するため、自社の社員と勤務時間帯が重ならないことが一般的です。裁量労働制で柔軟に動ける場合を除き、日中の定例 MTG に副業人材が参加できないケースも少なくありません。
受け入れ側は、非同期でのコミュニケーションツール活用や、タスクベースでの役割分担など、相手の稼働状況に合わせた柔軟な体制を整えることが成功の鍵となります。
副業人材の探し方と採用法
副業人材を採用する方法は、主に以下の 3 つがあります。自社の目的や求めるスキルに合わせて使い分けましょう。
マッチングサービスの活用
副業人材に特化したプラットフォームを利用する方法です。登録している人材のスキルや実績が可視化されているため、即戦力となる人材を効率よく探せます。
リファラル採用(社員の紹介)
自社社員の知人や以前の同僚などを紹介してもらう方法です。社風やスキルセットを深く理解している社員からの紹介であれば、カルチャーマッチの失敗が少なく、信頼性の高い採用が期待できます。
SNS や自社採用サイトでの募集
LinkedIn や X (旧 Twitter )などで求人情報を発信する方法です。専門性の高い人材は SNS で情報収集をしているケースも多いため、ダイレクトにアプローチが可能です。また、自社のブログや採用サイトで「副業人材募集」のページを設けるのも、自社に興味を持つ人材を集める有効な手法です。
副業人材を受け入れる 5 ステップ
実際の受け入れは、募集からオンボーディングまで段階的に進めます。流れを把握しておくと、抜け漏れを防げます。一般的な流れは、次の 5 ステップで整理できます。
- 募集の要件定義:依頼したい業務とスキルを明確にする
- 募集:マッチングサービスや SNS などで人材を探す
- 選考・面談:実績やスキル、稼働条件を確認する
- 条件すり合わせ:報酬・稼働時間・契約形態を調整する(まずは業務の切り出しやすさを検討し、可能であれば業務委託型を検討する)
- 契約締結:業務委託契約または雇用契約を結ぶ
要件定義を丁寧に行うほど、ミスマッチが減ります。契約を結んだら、早期に立ち上がってもらうための受け入れ準備を整えます。稼働時間が限られる副業人材は、社内事情の把握に時間をかけられないからです。必要なツールへのアクセス権付与や関係者の紹介、初期タスクの共有を初日までに済ませておくとスムーズに進みます。
副業人材を味方につけ、組織を強くする
副業人材の受け入れは、低コストで専門性を取り込み、組織に新しい風を吹き込む有効な手段です。成功の鍵は、契約内容の明確化と労務管理の事前準備にあります。特に契約形態の選択と情報漏洩への対策は、トラブルを未然に防ぐうえで欠かせません。法改正の動向も踏まえながら、自社の課題に合った形で副業人材を活用していきましょう。