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2025/11/25

企業向け

【フリーランス法】施行開始 1 年で見えた実態と企業が対応すべき義務・勧告事例・罰則を解説

【フリーランス法】施行開始1年で見えた実態と企業が対応すべき義務・勧告事例・罰則を解説

多様な働き方が広がる現代において、専門スキルを持つ副業人材やフリーランスとの連携は、企業にとって新たな事業機会を創出し、組織の柔軟性を高める重要な要素となっています。この関係を円滑かつ適正に進めるためには、法的な枠組みへの理解が不可欠です。

特にフリーランス法は、副業人材やフリーランスとの取引を行う企業にとって、重要な法律です。 2024 年 11 月に施行され 1 年が経過し、対応が進む企業と課題を抱える企業が二極化しています。本記事では、フリーランス法の概要、また施行後の勧告事例から企業が今すぐ取り組むべき対応策について解説します。

フリーランス法とは?基礎知識と施行の背景

フリーランス法とは?基礎知識と施行の背景

フリーランス法とは、 2024 年 11 月 1 日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の通称です。この法律は、フリーランスなどの個人事業主が取引先との関係で不利な立場に置かれ、報酬未払いやハラスメントのトラブルが発生している現状を踏まえ、「取引の適正化」と「就業環境の整備」を目的に制定されました。

法律の中で、発注事業者である企業に対し守るべき義務と禁止行為が明確に定められています。副業人材やフリーランスから申し出があった場合は、内容に応じて行政機関による発注事業者に対する調査が入る可能性があり、その結果、指導・助言・勧告が行われ、従わない場合には命令・公表の対象となります。その命令に違反した場合には、 50 万円以下の罰金が科されます。

「副業人材」もフリーランス法の対象になるのか

「副業人材」もフリーランス法の対象になるのか

フリーランスに業務を委託する場合だけフリーランス法に注意が必要なのか、それとも副業人材を活用する場合にも適用されるのか、この点で迷う人は少なくありません。実際には、フリーランス法の対象となるか否かは、「契約形態」と「事業者の形態」によって判断されます。

フリーランス法の対象「特定受託事業者」の定義
契約形態 業務委託契約(請負契約や準委任契約の総称)
事業者の形態 個人で、従業員がいない者
または法人で 1 人の代表者以外に役員や従業員がいない者

従業員を雇わない個人もしくは一人社長の法人で、仕事を依頼する際の契約形態が業務委託契約であればフリーランス法が適用される「特定受託事業者」に該当します。そのため副業人材の場合も、上記に該当する場合はフリーランス法の対象です。

企業の対応必須!フリーランス法の義務

企業の対応必須!フリーランス法の義務

フリーランス法が適用される取引において、発注事業者には主に以下の義務が課せられます。

1 . 取引条件の「明示義務」

業務委託契約を締結する際には、下記の取引の明示事項を書面またはメールなどの電磁的方法で明示しなければなりません。電話など口頭で伝えることは認められません。これまで信頼関係に基づいた口約束による取引や曖昧な条件での発注を行っていた場合は、法律違反となるリスクが高まります。今後は必ず書面や電磁的方法での条件明示を行いましょう。

明示事項
1 委託する業務の内容(成果物または役務提供の内容)
2 報酬の額
3 支払期日
4 業務委託事業者と業務受託者の双方の名称
5 業務委託をした日
6 成果物を受領する日/役務の提供を受ける日
7 成果物を受領する場所/役務の提供を受ける場所
8 (検査をする場合)検査完了日
9 (現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項

2 . 60 日以内の「報酬支払義務」

報酬の支払期日は、成果物を受け取った日または役務の提供が完了した日から 60 日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、その期日までに支払を完了する必要があります。従来の商慣行で 90 日や 120 日後の支払いを行っていた企業は、支払サイクルの見直しが急務です。注意すべき点として、「月末締め・翌々月末払い」といった自社の経理ルールを適用していた場合、この「報酬支払義務」に違反する可能性があります。

(例)

成果物の納品日: 4 月 1 日

自社の締め日: 4 月末日

自社の支払日: 6 月末日

上記の場合、納品日から支払日までが 60 日を超えているためフリーランス法違反となります。

また支払期日は、具体的な日を特定できるように定める必要があります。例えば「毎月末日締切、翌月末日支払」といった月単位で支払期日がわかるものであれば問題はありませんが、「◯月◯日まで」や「◯日以内」といった具体的な日を特定できない定め方の場合、支払期日を定めているとは認められません。もし支払期日を定めなかった場合は、成果物を受け取った日または役務の提供が完了した日が支払期日となります。契約時に支払期日を明確に定めましょう。

このルールは、副業人材やフリーランスのように個人で働く人々が、支払遅延によって連鎖的な資金難を招き、日々の生活に直結するといった資金繰りが悪化しやすい実情を踏まえたものです。契約時に支払期日を明確に定め、必要に応じて支払サイトを見直し、適正な支払サイクルを維持することで、副業人材やフリーランスが安心して業務に取り組める環境を整え、健全で持続的な取引の実現につながります。

3 . その他の義務(募集広告・ハラスメント)

フリーランス法では、支払い義務や契約内容の明示義務に加えて、募集時の明示義務やハラスメント対策についても規定されています。

募集時の明示義務

副業人材やフリーランスを募集する広告において、虚偽や誤解を招く表示が禁止されています。募集広告には、 Web 広告や SNS での広告も含まれます。募集広告に下記の事項が記載されていない場合は、誤解を招く表示として法令違反となりますので注意してください。

募集情報記載事項
1 (募集を行う者の)名称
2 (募集を行う者の)住所・所在地
3 (募集を行う者の)連絡先
4 業務の内容
5 業務に従事する場所
6 報酬

ハラスメント対策にかかる体制整備義務

パワハラ、セクハラ、マタハラなどに対応するため、以下のような体制整備が求められます。

  • 相談窓口の設置(社内外問わず、相談しやすい環境の確保)
  • 相談内容の適切な記録・管理
  • 相談に基づく迅速かつ公正な対応
  • 従業員・関係者へのハラスメント防止教育の実施
  • 再発防止策の策定と周知

また継続的に 6 カ月以上の業務を委託している場合は、「育児介護等と業務の両立に対する配慮義務」「中途解除等の事前予告・理由開示義務」も発注事業者に求められています。これらの体制を整えることで、副業人材やフリーランスが安心して働ける環境を確保し、トラブルや紛争の未然防止につなげることができます。

知らないと法令違反!発注企業の「 7 つの禁止行為」

知らないと法令違反!発注企業の「7つの禁止行為」

副業人材やフリーランスに 1 カ月以上の業務を委託する発注事業者は、優越的地位の濫用にあたる下記の「 7 つの禁止行為」を行ってはいけません。これらの行為は知らなかったでは済まされない違法行為となるため、十分な注意が必要です。

発注事業者の禁止行為
受領拒否の禁止 発注事業者の一方的な都合での成果物の受領拒否や発注取消し、納期の延期
報酬の減額の禁止 契約時など、あらかじめ定めた報酬の額を減額して支払う行為
返品の禁止 発注事業者の一方的な都合での成果物の返品
買いたたきの禁止 通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
購入・利用強制の禁止 正当な理由がなく発注事業者が指定する物や役務を強制して購入、利用させること
不当な経済上の利益の提供要請の禁止 発注事業者が自己のために、フリーランスに金銭、役務、その他の経済上の利益を提供させることによってフリーランスの利益を不当に害すること
不当な給付内容の変更・やり直しの禁止 費用を負担せずに、発注事業者側の都合で発注内容の変更、やり直しをさせること

フリーランス法施行から 1 年、勧告事例から学ぶ教訓

フリーランス法施行から1年、勧告事例から学ぶ教訓

フリーランス法が施行されてから 1 年。公正取引委員会を含む3省庁がフリーランス法の違法行為の調査を行い、 2025 年 9 月時点で 4 件の勧告・公表、 441 件の指導を行っています。公表されている企業の具体的な違反事例は以下の内容です。

  • 企業が業務を依頼する際に、報酬の額や支払期日、業務内容といった条件をすぐに書面またはメールなどの電磁的な方法で明示しなかった。
  • 報酬の支払期日を明示せず、納品日や役務提供を受けた日までに報酬を支払わなかった。
  • 役務の提供を受けた日から 60 日を超える期日を支払期日とし報酬を支払っていた。

また一部の企業では、特定受託事業者に無償で業務を行わせていたケースも発覚しました。これは禁止行為の「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に違反するものであり、公正取引委員会は企業に対し、無償で提供された労働に見合う報酬を速やかに支払うよう命じました。これらの勧告を受けた企業は、取締役会での事実確認や、役員・従業員に対する法令研修の実施、再発防止のための社内体制整備を求められています。

勧告事例が示すのは、業種を問わずすべての発注事業者に「取引の透明性」と「公正な報酬支払い」が求められているということです。法令を正しく理解し、互いに信頼できる取引関係を築くことが重要です。

法的対応から信頼関係構築へ

企業がフリーランス法に適切に対応するためには、体系的な実務体制の構築が不可欠です。まず重要なのは、社内での法律理解の徹底です。経営者だけでなく、実際に外部委託業務を担当する管理者や担当者全員が、法律の基本内容と実務上の注意点を理解する必要があります。

またすぐに取り掛かるべき具体策として、次の 3 点があげられます。

  • 取引の明示事項を網羅した契約書の整備
  • 60 日以内の支払義務を確実に履行するため、請求書の受領から支払実行までのプロセスを明確化し、遅延を防ぐ仕組みを構築
  • 契約変更が必要になった場合の協議手順、合意形成の方法、変更契約書の作成方法など対応プロセスの整備

フリーランス法への対応を単なる法的義務として捉えるのではなく、取引の質的向上と信頼関係構築の機会として活用することが重要です。こうした基盤整備こそが、変化する労働市場における企業の持続的な成長を支える力となります。

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