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2025/09/30
副業者向け業務委託契約で失敗しない!トラブルを回避するために押さえるべき 4 つのポイント
柔軟な働き方を実現するために、副業を始める多くの人が「業務委託契約」という契約形態を選択しています。しかし、この契約形態には法的な注意点やトラブルの原因となりうる要素が数多く潜んでいます。契約内容が不明確なままでは、思わぬ金銭的損失や法的責任を負うリスクもあります。
本記事では、業務委託契約で発生しやすいトラブルを防ぎ、委託者と受託者の信頼関係を築くため、契約前に押さえておくべき 4 つの重要ポイントを紹介します。
目次
重要ポイント①:「偽装請負」を回避する
業務委託契約を結ぶ際に注意したいのが「偽装請負」という問題です。契約上は業務委託契約でありながら、その実態が雇用契約の労働者であると判断される状態を偽装請負といいます。
偽装請負とは
契約は「業務委託契約」(請負契約・委任契約・準委任契約)として雇用契約がない個人事業主に委託される場合であっても、実態から労働基準法上の「労働者」であると判断されるもの。または実態として、労働者派遣事業者であると判断されるもの。
「労働者性」があると判断された場合、委託者側は残業代や社会保険料を過去にさかのぼって支払う金銭的リスクや、悪質な場合は罰則が科される可能性もあります。偽装請負の原因として、委託者側が残業代や社会保険料などのコスト削減をしたい動機があること、また業務委託契約を交わすうえで受託者と委託者の知識が不足しているという理由があげられます。
偽装請負という問題を回避するためには、両者間で雇用契約と業務委託契約の違いを理解すること、また労働者性があると判断される要因について知識を得ておくことが重要です。
雇用契約と業務委託契約の決定的な違いは「指揮命令関係」
業務委託契約と雇用契約で大きく異なる点は、「指揮命令関係」があるかどうかです。
| 雇用契約 | 雇用主に指揮命令権がある。労働者は勤務時間・勤務場所・業務の進め方などを雇用主の指示に従って遂行する必要がある。 |
|---|---|
| 業務委託契約 | 委託者と受託者は、対等な事業者間のパートナーのため、指揮命令権は存在しない。 |
業務委託契約では指揮命令関係がないため、委託者が受託者に対して時間や場所、また具体的な作業方法を指示できません。もちろん業務の目的を達成するためには、両者間の緊密なコミュニケーションなどが不可欠です。しかし、そのコミュニケーションが「指揮命令」とみなされないよう、細心の注意を払う必要があります。
雇用関係と業務委託契約の違いについては下記の記事も参考にされてください。
【徹底解説】雇用契約と業務委託契約の違いとは?知っておくべき法的性質と 4 つの重要ポイント
「労働者性」があると判断される基準
偽装請負にならないためには、日頃の業務で「労働者性」がない働き方をする必要があります。「労働者性」があると判断される基準について理解しておきましょう。
| チェックポイント | 「労働者性」あり | 「労働者性」なし |
|---|---|---|
| 委託者から頼まれた仕事を 断る自由はあるか |
断る自由なし | 断る自由あり |
| 仕事の内容や方法は どのように決めているか |
委託者から具体的な指示を受けて働く | 仕事量や進め方は、自分の裁量で決定する |
| 委託者から就業場所や 就業時間を決められているか |
委託者から具体的に決められている | 自分で決めている |
| 報酬はどのように 決められているか |
日や時間あたりいくらで決まっている | 仕事の完成や出来高で決まっている |
重要ポイント②:業務内容の明確化
委託内容が抽象的に定められていると、委託者と受託者の間で「ここまでやってくれると思っていた」「それは契約範囲外だ」といった認識の齟齬が生じ、トラブルとなるケースが多くみられます。契約書を交わす段階で事前に協議し、詳細を記載した契約書を作成しましょう。
請負契約における契約不適合責任
成果物の完成を目的とする請負契約においては、契約内容の要件を満たさない成果物を納品した場合に受託者が負う契約不適合責任が問題となります。契約不適合責任とは、引き渡した目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合に、受託者(請負人)が委託者(注文者)に負う責任のことです。契約書で成果物の仕様が具体的に定められていなければ、何が契約不適合なのかを判断することすら困難になります。請負契約では、契約段階で成果物について両者で確認し、契約書や仕様書に具体的な内容を記載することが重要です。また、作業を進める中で追加や仕様変更が起こる場合は、追加契約や契約変更を行い、両者の合意を文面で残すようにしましょう。
業務内容を明確にするために、契約書や仕様書などで納品すべき成果物や委託する業務範囲、納期・スケジュール、達成すべき KPI などを、可能な限り詳細にリストアップすることが望ましいでしょう。
重要ポイント③:知的財産権の帰属
デザイン、ライティング、システム開発、コンサルティングなど、業務委託契約では成果物や業務遂行過程での創作物の著作権や特許などの「知的財産権」が生まれることがあります。この知的財産権(著作権や特許権など)の帰属を巡るトラブルは非常に多いため、契約書での取扱いを必ず確認しておくことが重要です。
権利は原則「創った人」、委託者へ帰属する場合は契約書に記載
創作物の権利は原則として作成した受託者のものとなります。報酬を支払ったからといって、自動的に委託者のものにはなりません。
委託者側が成果物の権利を取得したい場合は、契約書に「成果物(委託業務の遂行過程)の知的財産権は委託者に帰属する。」という条項が盛り込まれています。受託者にとっては、この一文で自らの権利を手放すことになるため、署名前に必ず内容を確認しましょう。また著作権を委託者に譲渡する場合には、加工する権利「翻案権」(著作権法 27 条)、加工後のものを広く利用するための権利「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」(著作権法 28 条)については、契約書に明記をしなければ受託者に権利が残ります。契約書に「著作権(著作権法第 27 条及び第 28 条の権利を含む。)は、委託者に帰属する。」と記載されている場合、加工や再利用に関する権利も含めて全て委託者に移転します。成果物を自分の実績やポートフォリオとして利用できるかどうか、事前に契約書の条件の確認や委託者に確認をとるようにしましょう。受託者にとって知的財産権は、自分の成果を守るための大切な権利です。契約書をしっかり確認し、不利な条件にならないように注意しましょう。
重要ポイント④:秘密保持義務
業務委託では、委託者が自社の製品情報、顧客リスト、経営戦略といった重要な企業秘密を受託者に開示する場面が少なくありません。これらの機密情報が外部に漏えいした場合、委託者は計り知れない損害を被る可能性があります。情報漏えいを防ぐため両者間で情報管理ルールを明確にしておくことが必要です。以下の点を秘密保持条項で確認しましょう。
- ・ 何が「秘密情報」にあたるのか
- ・ 契約目的以外での使用の禁止
- ・ 契約終了後の義務の継続
- ・ 契約終了時の情報の返還・破棄の方法
業務委託契約では、今回解説した重要ポイントをしっかり理解し、委託者・受託者の両者で法的リスクを管理し、事前に契約書に明記すべき内容について話し合うことが重要です。
よくある業務委託のトラブル事例
これまで紹介した 4 つの重要ポイントに加え、実際の業務委託契約で受託者が直面しやすいトラブル事例を紹介します。いずれも契約書や事前の取り決めによって防げるケースが多いため、契約書への署名前に確認しておくことが欠かせません。
経費負担の区分が曖昧
業務に必要な交通費、通信費、ソフトウェア利用料などの経費を、どちらが負担するのか明確でないと、請求段階で揉めることがあります。契約書に「経費負担」に関する条項を設け、負担区分を明確にしましょう。
頻繁な仕様変更
業務の途中で委託者から何度も仕様変更や修正を要求されると、対応に追われ納期やコストが圧迫され採算が取れなくなるリスクがあります。「仕様変更は書面による合意を必要とする」と契約書に明記することで、繰り返される仕様変更要求の抑制となるでしょう。
第三者の権利侵害
受託者が作成した成果物が、第三者の著作権、商標権、肖像権などを侵害しており、委託者が第三者からクレームや訴訟を受ける可能性があります。契約書で責任の所在を明確にしておくことが重要です。
業務発注の遅延による報酬の不払い
委託者からの発注が遅れた結果、業務を進められず報酬が発生しないケースがあります。業務委託契約では、一定の仕事量が保証されないことがあるため、受託者は自ら仕事の獲得に動く努力が必要です。併せて、委託者と定期的にコミュニケーションを取り、発注の遅延を防ぐ体制を築いておくことも大切です。
良好なパートナーシップを築くために
業務委託契約は、正しく活用すれば委託者・受託者の双方に大きなメリットをもたらします。今回解説した「偽装請負」「業務内容の明確化」「知的財産権」「秘密保持義務」といった重要ポイントを深く理解し、起こりうるトラブルを事前に想定して契約前に両者間で協議し明確な合意を契約内容に落とし込むことが重要です。
適切なリスク管理を行い、信頼に基づいた強固なパートナーシップを築いていきましょう。