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2025/09/09
副業者向け【徹底解説】雇用契約と業務委託契約の違いとは?知っておくべき法的性質と 4 つの重要ポイント
働き方が多様化する現代において、「雇用契約」と「業務委託契約」の違いを正しく理解することは非常に重要です。両者は法的性質や働き方、報酬の仕組み、契約の安定性などにおいて大きな違いがあります。
労働者を保護する労働基準法が適用されるかどうか、社会保険の加入が可能かどうかは働く人にとって大きなポイントです。また、 2024 年に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下、フリーランス新法)」により、業務委託契約を結ぶフリーランスや副業者への保護も進んでいます。
本記事では、両者の定義と法的性質を整理し、 4 つの決定的な違いを徹底比較します。
目次
【基礎知識】雇用契約と業務委託契約の定義と法的性質
雇用契約と業務委託契約は契約の性質や適用される法律が異なっており、実際の働き方に直結しています。契約の基礎知識をしっかり理解しましょう。
雇用契約とは?|労働者を守る「指揮命令関係」のある契約
雇用契約とは、労働者が雇用主の指揮命令のもとで労働し、使用者はその対価として賃金を支払うことを約束する契約です。
民法第 623 条では、雇用契約を次のように定義しています。
民法 第623条
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
雇用主は労働者に対して、業務の内容、遂行方法、勤務時間、場所などについて具体的な指示を行う権限を持ち、労働者はそれに従う義務を負います。正社員やアルバイトといった働き方は、この雇用契約に該当します。
労働契約法・労働基準法で定められる雇用契約と労働者の権利
労働者は雇用主の指揮命令を受け、労働力を提供します。この関係は「主従関係」や「使用従属関係」と呼ばれ、労働者の立場が弱くなりやすいため、対等な契約の締結、また労働者の権利を保護する目的から「労働契約法」や「労働基準法」などの労働法が適用され手厚く保護されています。
具体例
- ・ 契約締結時の労働条件明示の義務化(労働条件通知書)
- ・ 解雇の制限
- ・ 最低賃金の保障
- ・ 労働時間と休憩の規制
- ・ 時間外労働に対する割増賃金の支払い
- ・ 年次有給休暇の取得
- ・ 社会保険(健康保険、厚生年金保険)、雇用保険、労災保険への加入 など
雇用契約は、労働法によって労働者が安心して働けるように保護されているのが特徴です。
業務委託契約とは?|対等な立場で業務を請け負う契約
業務委託契約とは、個人または企業(委託者)が特定の業務を、外部の個人や企業(受託者)に対して委託する際に締結される契約の総称です。ビジネスの現場で一般的に使われている言葉ですが、法律上の正式な用語ではなく、実務上の便利な総称にすぎません。その実態は民法に規定されている「委任契約」「準委任契約」「請負契約」の 3 つに分類されます。
| 業務委託契約 | 委任契約 |
|---|---|
| 準委任契約 | |
| 請負契約 |
この 3 つの契約形態の詳しい内容については、下記の記事をご覧ください。
参考:業務委託契約(請負・委任・準委任)の基礎知識と責任範囲を徹底解説
委託者と受託者は対等な事業者同士の関係であり、雇用契約のような主従関係や指揮命令関係は存在しません。受託者は業務遂行の手段や方法を自らの裁量で決定し、成果や業務の遂行に責任を負います。業務委託契約の受託者は「労働者」とは見なされず、労働法などの保護を受けることができません。
フリーランス新法で強化された業務委託契約のルール
2024 年に施行された「フリーランス新法」は、業務委託契約で働く人を保護するために新たに整備された法律です。ここでいう「フリーランス」には、専業で独立している個人だけでなく、副業として業務委託契約を結ぶ個人も含まれます。この法律により、委託者には「契約内容の書面または電磁的記録での明示」「報酬を 60 日以内に支払う義務」「不当な契約解除やハラスメントの禁止」などが課されます。これにより、副業やフリーランスで働く人も安心して業務に取り組める環境が整備されつつあります。
【比較】雇用契約と業務委託契約の 4 つの決定的な違い
雇用契約と業務委託契約は、特に指揮命令の有無や報酬形態、法的保護の範囲など、実務に大きな影響を与える 4 つの違いがあります。
| 雇用契約 (正社員、パート契約) |
業務委託契約 | |
|---|---|---|
| 指揮命令の有無 | あり | なし |
| 労働法・社会保険の適用 | あり | なし |
| 報酬 | 労働時間に応じた給与賃金 | 成果物の納品や業務遂行の割合に応じた報酬 |
| 解雇・契約終了 | 一方的な解雇は NG 30 日前の告知が必要 |
契約書で期間を定める 契約不履行での契約終了も可能 |
1 . 指揮命令権の有無と業務遂行の自由度
雇用契約の最大の特徴は、雇用主に指揮命令権がある点です。労働者は勤務時間・勤務場所・業務の進め方などを雇用主の指示に従って遂行する必要があります。始業・終業時刻が定められ勤怠管理されることや、上司から仕事の進め方について細かな指示を受けるのが典型例です。これは、雇用主の管理下で働く関係性を示します。
業務委託契約では、委託者から受託者への指揮命令権は存在しません。受託者は独立した事業者として、いつ、どこで、どのように業務を行うかを自身の裁量で決定できます。働く時間や場所が基本的に自由であり、業務のプロセスも任されているのが特徴です。契約で定められた成果物や業務遂行の目的を果たすことを求められており、そのための両者間のコミュニケーションは必要です。
形式的には業務委託契約を結んでいても、実態として委託者が受託者に対して指揮命令を行っている場合、「偽装請負」と判断される可能性があります。偽装請負は労働基準法違反となり、委託者は、割増賃金の支払いや社会保険への加入手続きなど、法律上の責任を追及されるリスクがあります。
2 . 労働法・社会保険の適用範囲
雇用契約では労働者を保護するために労働基準法・労働契約法などの労働法が適用されます。有給休暇や残業代の支払い、労災補償なども含まれ、雇用主は法的に労働環境を守る義務を負います。また、雇用契約で一定の勤務時間を満たせば、厚生年金・健康保険・雇用保険といった社会保険に加入できるため、病気や失業時のリスクに備えられるのも大きな利点です。
一方、業務委託契約では労働法は原則適用されません。受託者は労働者ではなく「事業者」として扱われるため、労働時間や休日に関する規制もなく、残業代も存在しません。また、社会保険は自分で国民健康保険や国民年金に加入する必要があり、保険料負担が大きくなる傾向があります。
3 . 報酬の性質 時間単価型か成果報酬型か
雇用契約における報酬は、労働時間に応じて支払われる給与が基本です。月給制や時給制などがあり、勤務日数や労働時間が安定しているため、毎月の収入も安定しやすい特徴があります。成果が必ずしも給与額に直結しない点はデメリットに感じる人もいますが、その分安定性は高いといえます。
業務委託契約では、報酬は成果物や業務の完了に対して支払われるのが原則です。例えば、アプリの完成、コンサルティングの提供など、成果に応じて報酬が発生します。そのため、スキルや実績が評価されれば単価を上げやすく、働き方によっては雇用契約より高収入を狙うことも可能です。ただし、継続的に案件がないと収入が不安定になりやすいというリスクもあります。
4 . 契約終了・解除の条件 解雇規制の有無
雇用契約では、労働者を一方的に解雇できません。「正当な理由」が必要とされ、さらに 30 日前の予告や解雇予告手当の支払い義務もあります。つまり、雇用契約は労働者の生活を守るために解雇が厳しく制限されているのです。
一方で業務委託契約は、契約期間や解除条件を事前に契約書で定めることが基本です。合意があれば柔軟に終了でき、契約不履行があれば解除も可能です。受託者側にとっては突然契約が打ち切られるリスクがあるため、契約内容の確認が非常に重要です。
自分に合った契約形態を選びましょう
雇用契約と業務委託契約は、働き方や法律上の位置づけが大きく異なります。
雇用契約は労働者を守るために労働基準法や労働契約法が適用され、社会保険や解雇規制といった手厚い保護が整備されています。業務委託契約は事業者同士の対等な契約関係であり、自由度が高い反面、労働法による保護は受けられません。フリーランス新法により報酬の支払いや契約解除ルールが整備され、副業者を含むフリーランスにとっても安心して働ける環境が広がりつつあります。
自分の働き方やライフスタイルに合わせて、どちらの契約形態が適しているのかを見極めることが重要です。