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2026/09/28

企業向け

副業解禁のメリット・デメリットとは?人事が知るべき効果とリスクの全体像

副業解禁のメリット・デメリットとは?人事が知るべき効果とリスクの全体像

優秀な人材の獲得や従業員の自律的なキャリア形成を目的として、副業を解禁する企業が増えています。社員に副業を認めることは、採用広報や企業ブランディングにプラスに働きます。

それだけでなく、モチベーション向上や、会社が直接コストをかけずに社員の成長機会を増やせるといったメリットもあります。

一方で、長時間労働や情報漏洩、人材流出といったリスクも無視できません。本記事では、副業解禁が企業にもたらすメリットと見落とすと危険なデメリット、効果を最大化するための実務ポイントまで解説します。

副業解禁の現状と人事担当者を取り巻く環境

副業解禁の現状と人事担当者を取り巻く環境

副業解禁は、一部の先進企業だけの取り組みではなく、多くの企業にとって人事制度の標準的な論点へと変わりつつあります。背景にあるのが、2018 年の厚生労働省「モデル就業規則」の改定です。

従来は「許可なく他の会社等の業務に従事しない」という一律禁止規定が含まれていましたが、改定後は副業・兼業を原則認める方向へと舵が切られました。さらに 2020 年と 2022 年のガイドライン改定により、労働時間管理や健康確保のルールも整備されています。政府としても、個人のリスキリングや企業の人材流動化、労働生産性の向上を重視しており、その一環として副業の促進が期待されています。

大企業 500 社を対象にした 2025 年の民間調査では、正社員の副業を認めている企業は 55.2 %、禁止している企業は 44.8 %という結果でした。つまり、副業を認める企業が半数を超えたことになります。人事担当者は「解禁するか否か」よりも「どう設計するか」を問われる段階に来ているといえるでしょう。

出典:みらいワークス総合研究所「 2025 年|大企業における「副業・兼業に関する人事制度」を調査」

副業解禁が企業にもたらす 5 つのメリット

副業解禁が企業にもたらす 5 つのメリット

副業解禁の効果は「社員が喜ぶ」といった表面的なものに留まりません。企業側から見た 5 つのメリットを解説します。

1 . 優秀人材のリテンション効果

代表的な企業メリットは、優秀人材の離職を防ぐリテンション(人材の引き留め)効果です。社員の「やりたいこと」と本業のミッションが完全に一致するとは限らず、その差分が転職の動機となります。

副業という選択肢があれば、社員は自己実現の欲求を社外で満たしつつ本業に在籍し続けられます。「小さい規模から事業を始めてみたい」という社員のニーズに応えられれば、帰属意識も高まるでしょう。従業員からすると「自分のやりたいことを会社が後押ししてくれている」という実感が得られるため、社内に新規事業のノウハウやアイデアを蓄積できる効果もあります。

2 . 採用競争力の向上

副業を認めると、採用市場における強力な差別化要因として機能します。特に 20 〜 30 代の若手・中堅層は、副業可否を企業選びの判断軸に据える傾向が強まっているためです。応募者の母集団が量・質ともに改善し、スカウトの返信率や内定承諾率の向上にもつながります。

結果として人材紹介会社への依存度が下がり、採用単価を引き下げる効果も期待できるでしょう。報酬条件で見劣りするポジションでも「副業可」が補完材料として機能し、競合との人材獲得競争で優位に立てる場面が増えます。

3 . 社員のスキルアップとイノベーション創出

副業は、社員にとって社外での実践型リスキリング(学び直し)の機会となります。社内研修では得られない異業種の知見や顧客視点が本業に還流するためです。

例えばエンジニアがスタートアップで副業すれば、本業では触れない技術スタックや意思決定の速さを体験できます。こうした経験が本業の新規事業開発や DX 推進に活きれば、生産性の向上につながるでしょう。

4 . 越境学習による組織活性化

「越境学習」とは、所属組織を越えて他の環境で学ぶ取り組みを指す概念です。長年同じ会社で働く社員ばかりの組織は業界常識に染まりがちで、外部環境の変化に気づきにくくなる傾向があります。副業経験者が増えれば、外部基準で自社を見る目が育ち、視野と人脈が広がります。具体的には次のような形で還元されます。

  • 意思決定の質の向上:他業界の成功・失敗事例を踏まえた提案が増え、施策の打率が高まる
  • 新規事業・改善アイデアの創出:社外で得た顧客視点や技術トレンドが事業開発に反映される
  • 採用・営業のネットワーク拡張:副業先で築いた人脈が、業務提携や中途採用のリファラル経路として機能する

5 . 自律的キャリア形成によるエンゲージメント向上

副業解禁は、会社が社員に「キャリアの主導権を握ってよい」というメッセージを発する取り組みです。これが心理的契約(社員と会社の間の暗黙の期待関係)を強め、エンゲージメントを高めます。「会社が自分の成長を支援している」「自分の人材価値を高められる」という納得感は、生産性にも好影響を及ぼします。

見落としてはいけない副業解禁のデメリット

見落としてはいけない副業解禁のデメリット

メリットだけでなく、マイナス面も考慮する必要があります。主なリスクは以下の 4 つです。

  • 長時間労働につながる:副業者は休日や夜間にも働くため疲労が蓄積しがちです。会社が長時間労働を把握しながら調整を怠れば、安全配慮義務違反として損害賠償を問われる可能性があります。
  • 情報漏洩が起こる:社外で働くことは、顧客データや開発ノウハウが外部へ漏れる経路を増やします。同業他社のプロジェクトに関わる過程で、本人に悪意がなくても自社情報を転用してしまうケースは起こり得ます。
  • 競業避止違反が起こる:マーケティング担当者が、競合サービスの SNS 運用や広告運用を業務委託で請け負うケースです。本業で培った勝ちパターンや顧客理解が競合の成果に直結するため、本人に違反の意識がなくても自社の競争優位を削る結果になりかねません。
  • 本業のパフォーマンス低下・人材流出:副業に関心が偏ると本業がおろそかになるほか、副業先からの高待遇での誘いや独立検討によって、かえって人材流出を招くケースも考えられます。

これらは「禁止」ではなく「設計」で対処すべき領域です。申請制の導入、月間労働時間の上限設定、誓約書の取得、定期面談による健康確認といった運用ルールを組み合わせれば、基本的には対処できます。特に効果が大きいのが、副業の契約形態を原則として業務委託型(請負・準委任)に限定する方法です。これにより、雇用型の副業に伴う労働時間の通算管理という重い負担そのものを回避できます。

メリットを最大化するために人事担当者が押さえるべき実務

メリットを最大化するために人事担当者が押さえるべき実務

申請書に「契約形態」を必ず明記させる

申請書には「雇用契約か業務委託契約か」を記入する欄を設けましょう。雇用契約の副業は本業と副業先の労働時間が通算されるため、割増賃金の負担や時間外労働の上限規制への対応といった重い労務管理が発生するためです。一方、業務委託(請負・準委任)は労働時間の通算対象外であり、こうした管理の多くが不要になります。

労務管理の負担を抑える観点からは、副業は原則として業務委託型での受注を推奨し、雇用型は例外的な扱いとする設計が望ましいでしょう。契約形態を申請書段階で切り分けておけば、運用フローを分けて省力化できます。

労務管理の効率化を優先し「業務委託型(請負・準委任)を原則とする」設計は有効ですが、他方でアルバイト・パート等として異業種に挑戦したい社員の機会を制限する可能性もあります。労務管理の簡略化と、社員の挑戦機会の最大化、どちらを優先すべきかは自社の目的やカルチャーに照らして判断することが重要です。

競合企業リストを社内で明文化する

「競業避止」は判断が曖昧になりやすい論点です。禁止する業種や具体的な競合企業をリスト化しておくと、申請承認のスピードが上がり、現場管理職もブレずに判断できます。

リストは「業種カテゴリ(例:同業 SaaS 、人材紹介)」と「個別社名」の 2 階層で整理すると、新興企業の登場にも対応しやすくなります。年 1 回など定期的に見直すルールと、判断に迷うケースの最終判断者(法務部長や人事責任者など)を決めておくことで、運用が属人化せずに済みます。

管理職への教育を制度導入とセットで行う

副業申請の一次判断は現場管理職が担うケースが大半です。副業にマイナスイメージを持つ管理職に承認権限が渡ると、制度が形骸化しかねません。説明会では、制度の趣旨や判断基準だけでなく、「申請が出た際の面談の進め方」「健康状態のモニタリング方法」まで伝えると実効性が高まります。自部署の優秀人材が副業を理由に評価を下げられないよう、人事評価との切り離しを明文化することも重要です。

業務委託型でも適切な運用管理を徹底する

副業を業務委託型に限定すれば労働時間の通算義務は生じませんが、「業務委託だから会社は一切関与しなくてよい」というわけではありません。

契約の名称が「業務委託」でも、実態として会社の指揮命令を受けて働いていれば、労働者と判断されるおそれがあります。労働者と見なされれば、結局は労働時間の通算対象となり、割増賃金の支払い義務も発生します。

人事が副業先の働き方の実態を直接調べるのは現実的ではありません。そこで申請時には、契約書の名称だけで判断せず、「稼働時間を拘束する条項がないか」「業務指示の出し方が契約書の規定に沿っているか」「報酬が成果物・業務単位で設定されているか」といった項目を並べたセルフチェックリストの提出を求めるのが現実的な対策です。

効果測定は申請者数だけで判断しない

副業解禁の効果は、実際に副業を始めた社員だけでなく「制度があるから残った社員」にも及びます。「副業可能であることへの満足度」「キャリア自律意識」「従業員推奨度( eNPS )」といった指標を制度導入の前後で比較すると、本当の効果が見えてくるでしょう。

まとめ:副業解禁は「守り」ではなく「攻め」の人事戦略

副業解禁は単なる福利厚生ではなく、人材戦略の中核に位置づけられる施策です。自社のリソースだけでは届かない成長機会・人脈・採用チャネルを、社員を起点に外部から調達する「攻めの人材活用」が可能です。

これにより、自己実現を理由とした優秀人材の離職を抑え、応募母集団の改善によって内定承諾率の向上と採用単価の低減につなげる効果が期待できます。また、異業種での実践経験が新規事業開発や DX 推進の推進力となり、キャリアの主導権を委ねる姿勢が心理的契約を強め、エンゲージメントを押し上げます。

リスクは確かに存在しますが、契約形態の切り分けを軸とした設計次第で十分にコントロール可能です。厚生労働省のガイドラインや先行企業の事例を参考に、自社に合った形での解禁を検討してみてはいかがでしょうか。

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